I・DE・A

I・DE・Aというタイトルについて
  こじづけといっちゃこじづけなんですよ。今まで自分で究極の氷室京介の音楽って言われるものが、どんなものか探りながら10年間きたわけじゃない?そこで今回は本当に究極の氷室京介の音楽って概念に近づけたかなって満足度が高かったんで。このタイトルをつけても恥ずかしくないだろうと。実は何作も前から「I・DE・A」か「KYOSUKE HIMURO」ってタイトルを使いたかったんだ。でも使えなかったんで。

  アルバムのタイトルは「イディア」と読むんです。辞書にはイデアと書いてあるんですけど、外人に聞くとそんな言葉ないっていうんですよ(笑)。哲学用語なんでしょうね。ラテン語ですかね。英語のルーツみたいなもんでしょう。意味は純粋理性概念。究極の理性概念。実際にパーフェクトというものは世の中にありえないんですよね。その中の究極な形を言うんですよ。もっとも、本当の意味の究極の音楽なんてないんでしょうけど、今回のアルバムはそう呼ぶに相応しいというか、そう読んでも恥ずかしくないなという。
ソロ一年目に知った言葉なんですけど、いつか絶対に使おうと思って。自分で胸を張れるアルバムができたときに使おうと思って温めてたんです。そのときは「氷室京介」というタイトルか「イディア」にしようと思ってた。


RE-BORN
  アルバムの一曲目ですけど、すごい気に入ってる曲ですね。日本のロックにはなかったでしょう。構成とかほとんど洋楽ですね。洋楽っぽいとかいう言い方が、わりと日本でのほめ言葉みたいですけど、”ぽい”じゃなくて洋楽ですよね。スティーブと俺のコラボレーションがいちばん顕著に出てる例ですね。間奏の後のセクションっていうのは、元々俺の曲にはなかったものなんですよ。アレンジの途中でスティーブが何の断りもなく作ったセクションで(笑)。ここで何か歌えよって言われて。HEATのときもこっちをシングルにしようかって迷ったくらい。こういう曲が評価されると世の中変わりますよね。

この曲を一曲目にしたのはやっぱり自信の表れかな。でもシングル選びのときは葛藤があって、HEATをシングルにするのかRE-BORNにするのかって。で、みんなとディスカッションして、やっぱり日本はHEATを出したんだけど、今回日本に帰ってきて…。RE-BORNでも行けるなって思った。俺が思ってるほど日本のオーディエンスは幼稚ではないねって。

SWEET MOTION
  今回は曲順にはこだわりましたね。特に前半四曲は全部、今までの氷室京介にはなかった新しい要素が入ってます。これだけ曲が違う人なんです。スティーブと、イナフ・ズナフというグループがあるんですけど、そこのボーカルが作った曲で、最初聞いたときはあんまり俺っぽくないなとも思ったんですけど、実際にスティーブが作ってくれたデモテープに自分の家で歌を入れてみたら、歌唱力のインパクトというか、アイデンティティに結構驚きまして。俺が歌うと全部俺の歌になるんですね(笑)。ポリグラムの社長石坂さんという人なんかは、この曲がいちばんヒムロックぽいって言ったりしてます。そんなものかもしれませんね。

曲は元々スティーブが持ってた曲なんだ。「こんな曲あるけど、もし歌ってみたければこれ歌ってみない?」って感じで出てきた曲なの。ちょっとアルバムの雰囲気と違うって思って。でも歌ったら俺の曲になってさ。それなりに声のアイデンティティっていうか氷室京介っていうライフスタイルがフレキシブルにあって、いろんな曲に対応できて俺の曲になったよね。

FLOWER DIMENSION
  何度も言いますけど、今回のアルバムは全部すきなんですが、「堕天使」とこれは特に好きですね。変拍子の曲はいつかやりたいとは思ってたんです。ここ何年か流行ってるじゃないですか。サウンドガーデンとかスティングとか。ちょっと旬を過ぎた気もするんですけど。俺の曲の中では一曲もないんで。八分の七拍子の曲を作ろうとして作ってます。拍子が変なんでたぶん歌詞もシュールというか、きっとイメージしてビジュアルにつながる言葉が浮かんだんでしょうね。シュール・レアリスムっていうと、意味がないことを指すというような錯覚もありますけど、これは本当の意味でシュールないい世界へ言ってますよね。

これまたテクニカルなんだよね。8分の7拍子ってのも日本じゃあまり聞かないしね。スティーブはビートルズの”ヘイジュード”みたいなテンションの付け方したいねって言ったけど、俺はビートルズよりは最近のバンド……、コレクティブ・ソウルって感じかなって(笑)。でもさ、全く関係ないメロディが間奏あけに入ってくるでしょ。すげー洋楽っぽいよね。だから余計に飽きない。すげーいいよね、かっこいいよね。自分で言っちゃったけど(笑)。最初にオリエンタルなパーカッションが出てくるのはスティーブの打ち込み。アメリカ人の主張と日本人の主張がそれなりにぶつかって喧嘩しないで共存するといこういうものになるんだろうね。

堕天使
  これはアルバムの中でいちばん気に入ってる曲です。最初、詞が上がってきて文字面だけ見たときは歌えるかなと思ったんですけど。オケと一緒に1,2回歌ったら全部意味がわかりました。これは松本隆大先生に御礼を言いに行こうと思ってます。素晴らしいですよね。感想に流れ込む前の歌詞とかすごいですし。スティーブのナイロン弦のスパニッシュ・ギターもいいでしょう。そこからヘビー・ギターが出てくる。むちゃくちゃかっこイイ。彼のアイデアです。俺のほうからは”アコースティックギターが沢山フィーチャーされていてループものが後ろで薄くなってて”ぐらいのリクエストだったんですけど。U2のバラードみたいにしたいと思ったんですけど、もっと今っぽくなりましたね。

これはスティーブのプログラミングの妙だよね。ただのバラードと全然違うものになってるよね。だからさ、スティーブはヘヴィメタのギタリストって思ってる人結構多いけど、それってすげー勘違いだよ。

NATIVE STARANGER
  いわずとしれたシングル曲ですね。これはスティーブのアレンジじゃないんですよ。佐久間さんのアレンジでスティーブはギター弾いてるだけなんで、そういう意味ではこれとDRIVEは骨組みになっているビート感が他とは違いますね。ただ、スティーブのギターのカッティングとかは、やっぱり彼の味がちゃんと出てますね。ソロはカッコイイし。スティーブのギターってどんな形でも自分が出ますよね。この曲を録ったときは、ここまでいっしょにやれるとは思わなかったですけど、そうやって考えると大きい意義があった曲になりましたね。

これは佐久間さんのビート感と、スティーブのサイドギターのビート感がおもいっきりずれてるのよ。そのずれてるところのタイム感が俺はすごいかっこいいと思うんだけどね。かなり掟破りだと思うけど、ヘッドホンで聴いてても、ん?って。どう聴いていいのか(笑)。でもそこで俺が取りもってるんだな、音楽的運動神経のよさで(笑)。そこには自信持ってるんですけど、そこは悩んで10何年間やってきただけあってさ、器用だよ。すごくプリミティブに聴かせるような歌でも、それを計算でやってるところあるんだよね。そこは俺の持ち味かもしれない。

LOST WEEKEND
  これはスティーブが一年とか二年とか温めてた曲だと思うんですね。サビの部分だけできていて、オケも全部できてたんですよ。そこにAメロとBメロの部分をお前が作ってくれるなら、この曲使っていいよ、っていうんで、俺もこんな曲があるんだって共作になったんです。ギターの疾走感は気持ちいいですよね。ボーカルとギターが競争してるみたいに聴こえるんですけど、決してそんなふうに入ってないんですよ。そう聴こえるのが彼のテクニックなんでしょうね。意味不明なダイアローグが入ってますけど、訳分からないことをみんなで楽しんでます。ロイ・リキテンスタインのポップアート的なニュアンスにしたいねと。もし、あのダイアローグを聴いて意味が分かる人がいたらお葉書ください(笑)。多分分かる人いないでしょう。

スティーブが「失われた週末」っていう、映画をイメージしてメロディを作ったんだって。で、俺が松井さんにその話したら”LOST WEEKEND”っていうタイトルを残して、その映画をモチーフに歌詞を書いてくれたもの。松井さんの詞は正直どんどんシュールになっていってるね。

NO MORE FICTION
  個人的に気に入ってる曲ですね。レコーディングに立ち会ってくれた何人かの日本人スタッフは絶賛してくれた曲です。これは自分で詞を書いてます。詞を自分で書くと歌入れがこんなに早いものかっていうことを実証してくれました。そのくらいいい加減で(笑)。でも、いい加減な歌なほうが勢いがあったりしますからね。あっという間でした。ギターのリフもめちゃめちゃカッコイイし。これはいわゆるバンド時代の曲に結構近いかもしれないですね。ギターのリフの漢字とか、時代間とかが。歌詞の”フリーク・ショウ”っていうのはスラングで、彼女と喧嘩していて「もうやめろよいい加減に」っていうような意味があります。いさかいをやめるとか。いい詞ですよね、自分でいいますが(笑)。この曲の場所はここしかなかったです。

松井さんに最初お願いした詞があまりにもシュールすぎて何がいいたいのかわからなくて歌えなくてね。差し戻してる時間もなかったし、また自分で書きたいなって衝動もあったんでたまたま自分で歌詞を書いてしまったんだ。これはじっくり読んでいただけるとわかるけど、いい詞ですよね(笑)。曲自体、すごく自然に歌えるメロディだし。

DRIVE
  これは、NATIVE STARANGERのカップリングの曲なんで、アルバムの中では多少浮いてる曲ですけど。かなりよれてますから。ビート感といっても、組み合わせてスピード感がかなり変わってくるんですね。ベースがちょっと前に行ったり、後ろに行ったり、代わりに歌が行ったり、ギターが行ったり。その微妙な差で全部変わって聴こえるんですよ。そういう意味では、これは、ベースとドラムが先に行ってという日本のスピード系のバンドがいちばんとってるパターンですよね。でも、ここに入るとインパクトは強いですね。

まぁ、一言で言うならやんちゃなビートってとこですか。やんちゃなオケですよね。どうしていいやらっていう(笑)。これとNATIVE STRANGERは、カード・ビスケーラっていうドラマーがやってるんだ。ニール曰く。今世界で一番売れてるドラマーだって言うんだけど、東洋系でね、ルックスは全然パスなやつなんだけど(笑)、プレイは最高ですよ。

HEAT
  これはシングルを作ろうとして作った曲です。循環コードを踏まえた上で、日本人っておいういうの好きだよな、みたいな。分かり易すぎたかとも思ったんです。俺の歌って歌の始まりが前の小節をくってるみたいな入り方してる曲が多いですけど、これはそうじゃないですから。スティーブには日本じゃこういうK特が受けるんだという話をして、もし嫌だったらいいよって行ったら、チープ・トリックのシャッフル系の曲みたいにしようよっていう話になって。これはスティーブの功績が大きいですよ。日本人アレンジャーがアレンジしてたらホントに日本ぽい曲になってたと思いますよ。サビの部分のカウンターのギターなんて12本くらい重なってますからね。

これはたぶんアメリカ人のスティーブにはかなり変わった曲に聴こえるんじゃないかなって言ったね。日本特有のポップだっていうことを……。

DISTANCE
  これも好きなんです。偶然なんですけど、俺のアルバムには毎回必ず、ちょっと泥臭い部分の曲っていうのが入ってるんですけど、今回はこれがいちばん泥臭い部分ですね。泥臭い部分の曲の詞を自分で書いていちばん最後の曲にするって「Memories of Blue」もそうだったけど、比較的アルバムの完成度が高いときが多いんです。そういう意味でもここで着地してるっていう感じの大事な曲で。この曲がなかったら全体のニュアンスがまた変わっちゃうし。アレンジもほとんど俺がやってるし。余計スティーブっぽくないですね、ギターもスティーブ以外の人が弾いてますし。大人っぽいというか、これも非常にいい意味でRE-BORNですよね。これはもう絶対ここしかなかったな。

歌詞がね、自分の晴れやかな姿が潔いっていうか、行くぞ!ってのが出てるよね。ギターはスティーブのスケジュールが押さえられなくて、フラン・バーニッシュってギタリストに弾いてもらった。ブルースっぽいギターを弾いてもらってね。彼はまだこれからの人なんだけど才能のある人だよ。



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